平成31年(行ケ)第10010号(配列操作のための系,方法 および最適化ガイド組成物のエンジニアリング)

平成31年(行ケ)第10010号(配列操作のための系,方法 および最適化ガイド組成物のエンジニアリング)(不服2017-13795,特願2016-117740号,特開2016-165307号)

令和2年2月25日判決言渡,知的財産高等裁判所第1部~紹介事項1~

089260_hanrei.pdf (courts.go.jp)

 

1.判決

 請求棄却

 

2.争点(一部)

(1)原告(出願人)の主張(一部の要旨):

 引用発明1について特許庁が認定した以下の事項は、引用発明1から認定できない。

 

 「前記ガイド配列が,真核細胞中の前記1つ以上のポリヌクレオチド遺伝子座を標的とし,前記Cas9 タンパク質が,前記1つ以上のポリヌクレオチド遺伝子座を開裂し,それによって,前記1 つ以上のポリヌクレオチド遺伝子座の配列が,改変される」

 

 引用例1のFACS実験とPCR実験により得られた結果には矛盾があるので,当業者は,この矛盾点を検討し,CRISPR-Cas9システムが真核細胞において作動するか否かにはなお疑問があると判断したはずである。

 このように,引用例1には,真核細胞内でのゲノムDNAの標的部位での配列の編集ができなかった系が記載されているにすぎないから,上記のとおりの配列の編集ができる本願発明と実質的に同一であるということはできない。

 

(2)被告(特許庁)の主張(一部の要旨):

 引用例1には、引用発明として認定し得る程度十分に開示されている。

 

3.裁判所の判断(上記争点についての判断における要旨)

 引用例1の実施例4,5や、これらの実施例で行われている蛍光活性化細胞選別(FACS)やPCR実験の結果について良く読めば、引用例1には、発明の構成が形式的な記載だけでなく、実体を伴って記載されていたというべきである。

 

***書き屋弁理士の独りごと***

 引用例1(先願1)に書かれている内容を丁寧に読んだうえで、引用例1に記載された発明と本件発明が同一と判断された例かと思います。私は機械系や制御系の仕事を主に行っており、この分野の技術的なコメントはできません。

 でも、引用例1を出願した側に立って考えるとすると、実施例を丁寧に記載しておいてよかったな~という感じではないかと想像します。

 最近は、明細書原稿の納期が短かったり、比較的低料金で出願を受任していたりして、丁寧な仕事を行うための時間の確保に苦労します。

 そんな中でも根気強く丁寧に仕事しないといけませんね。日々精進して参ります・・・。

 なお、本件は、簡便なゲノム編集を可能にする話題の発明のようで、現時点でもファミリーがたくさんいました!

 

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