平成31年(行ケ)第10010号(配列操作のための系,方法 および最適化ガイド組成物のエンジニアリング)  ~紹介事項2~

平成31年(行ケ)第10010号(配列操作のための系,方法 および最適化ガイド組成物のエンジニアリング)(不服2017-13795,特願2016-117740号,特開2016-165307号)

令和2年2月25日判決言渡,知的財産高等裁判所第1部 ~ご紹介事項2~

089260_hanrei.pdf (courts.go.jp)

 

 前回ご紹介したのと同じ判決ですが、争点が違っています。

 

1.判決

 請求棄却

 

2.争点(一部)

(1)原告(出願人)の主張(一部の要旨):

 引用例1は,標的部位において組換えが生じたことを実験データによって示していない。引用発明1は,当業者が反復継続して所定の効果を挙げることができる程度まで具体的・客観的なものとして構成されていないから,特許法29条の2による後願排除効を有していないというべきである。

 

(2)被告(特許庁)の主張(一部の要旨):

 引用例1には、引用発明として認定し得る程度十分に開示されている。

 

3.裁判所の判断(上記争点についての判断における要旨)

 特に先願明細書等に記載がなくても,先願発明を理解するに当たって,当業者の有する技術常識を参酌して先願の発明を認定することができる。求められる技術内容の開示の程度は,当業者が,先願発明がそこに示されていること及びそれが実施可能であることを理解し得る程度に記載されていれば足りるというべきである。

 

***書き屋弁理士の独りごと***

 特許法29条の2は、先に出願されているけれども未公開である他人の発明によって、後に出願された発明を拒絶できるようにしている規定です。

 本判決にあるように、発明というのは、明細書の全体の文脈や、明細書と図面との関係から判断して認定されたりします。ですので、我々の日常業務でも、特許庁の審査官が提示してきた引用文献や、自分が書いた明細書を丁寧に読んで、複数の箇所に断片的に書かれている内容を結び付けて発明を説明する作業が必要になったりします。直接的に記載されていることを説明するのではないですし、ご都合主義になって言い過ぎてもいけないので、加減が難しいです。日々精進して参ります・・・。