令和元年(行ケ)第10116号(回転ドラム型磁気分離装置)~紹介事項2~

令和元年(行ケ)第10116号(回転ドラム型磁気分離装置)

(不服2018-12494,特願2014-202824)令和2年5月20日判決言渡,

知的財産高等裁判所第2部 ~紹介事項2~

089515_hanrei.pdf (courts.go.jp)

 

1.判決

 請求認容

 

2.引用文献1

 

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 排出口15からタンク17内に混濁液が投入され,仕切板19で仕切られた右側の区域において,鉄粉等を含有したダーティオイルから鉄粉等が除かれ,除かれたクリーンオイルは,仕切板19の上端と液面との間の間隙を越流して,左側の区域に移り,同区域にあるクリーンオイルはポンプによって吸い上げられてタンク17の外の工作機械に送られる。このような混濁液の流れに伴い,タンク17内に混濁液の流れが生じる。

 

3.被告(特許庁)の主張(一部の要旨)

 引用発明は,混濁液の流れによりマグネットドラム25に接近して吸引されるような機会を与えることにより,混濁液内に浮遊する微細な鉄粉を,タンク内に複数個設置されたマグネットドラムの組合せによって除去しようとするものである。

 

4.裁判所の判断(争点についての判断における要旨)

 引用文献1の記載からすると,引用文献1に記載された装置は,混濁液内に浮遊する微細な鉄粉等の不純物をもマグネットドラムに吸着させて分離排出するものであることが認められるが,そうであるからといって,必ずしも,混濁液をマグネットドラム25からマグネットドラム27に向かって流れるようにする必要はない。

 したがって,被告の上記主張は理由がない。

 

***体幹弁理士の独りごと***

 引用文献1には、液の「流れ」についての説明が記載されていません。特許庁は液が「流れる」と解釈していますが、裁判所は、“引用文献1の発明が機能を発揮するために必ずしも「流れ」は必要でないから、「流れる」とまではいえない”としています。

 このような判決に対する批評として、“引用文献1に「流れ」のことが記載されていれば防げた論争であった”というのがありがちな気がします。でも、引用文献1の明細書を書く立場に立てば、発明者の方と知財担当者の方の意見の取りまとめが大変で、「流れ」の情報にたどり着く前に手一杯、ということもあります。そうならないよう、効率よく的確にヒアリングすることが必要ですね。日々精進して参ります!