令和元年(行ケ)第10116号(回転ドラム型磁気分離装置)~紹介事項1~

令和元年(行ケ)第10116号(回転ドラム型磁気分離装置)

(不服2018-12494,特願2014-202824)令和2年5月20日判決言渡,

知的財産高等裁判所第2部 ~紹介事項1~

089515_hanrei.pdf (courts.go.jp)

 

1.判決

 請求認容

 

2.本件発明

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・特許請求の範囲の記載:(争点に直接関係する部分のみ)

「前記第1の回転ドラム下部の流路を形成する底部材とを備え,・・・前記スクレパーにより掻き取られた磁性体が・・・前記使用済みクーラント液の流れに沿って前記第1の回転ドラムへ誘導される」

第1の回転ドラム:13、スクレパー:27、底部部材:30

 

3.引用文献1

 

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4.争点(一部)

・被告(特許庁)の主張(一部の要旨):

 引用文献1においては,タンク17の底部が底部材に相当し,マグネットドラム27とタンク17の底部との間に混濁液の流路が形成されるので、相違点3は存在しない。

 

5.裁判所の判断(上記争点についての判断における要旨)

 特許請求の範囲の記載からすると,第1の回転ドラム(13)に向かうクーラント液は,第1の回転ドラム(13)下部に第1の回転ドラム(13)と底部材(30)との間に形成された流路を流れるものであって,スクレパー(27)によって掻き取られた磁性体を第1の回転ドラム(13)に誘導するものであると解される。そして,このことは,明細書の記載でも裏付けられている。

 しかし、引用文献1には、マグネットドラム27(第1の回転ドラムに相当)とタンク17の底部との間にマグネットドラム25(第2の回転ドラムに相当)からマグネットドラム27に向かう混濁液の流れが生じていることは記載されていない(甲1)から,相違点3’は存在し,被告の上記主張は理由がない。

 

***体幹弁理士の独りごと***

 引用文献1のカキ取り板39の上側に着目すれば、マグネットドラム25からマグネットドラム27に向かう混濁液の流れが発生しているように解釈できると思います。でも、“タンク17の「底部」のことではないので、引用文献1からは、タンク17の「底部」の流れまでは分かりませんよ~”と判断された例かと思います。

 発明同士の一致点・相違点の判断は、発明の本質を弁える(わきまえる)上でキモになる作業と思います。弁理士の「弁」の字は、もともと「わきまえる」の意味の「辨」だったそうです。

 自分が特許庁に任期付審査官(補)として採用されたとき、最初の頃の研修で、民間人時代と一番違いを感じたのは、一致点の認定の厳しさでした。また、任期付審査官は、審判官になれないのですが、審判の合議体を経験する研修がありました。そのときも、一致点の認定に関して難しさを感じました。

 でもいろんな要因(一言では言えません)があって、ときには本判決例のように一致点・相違点の認定が甘くなってしまうこともあります。人間だもの。自分も判断が甘くならないよう日々精進して参ります!